加齢に伴う代謝の変化を切り口にして、健康寿命の延命を図ることを目標とした外来です。特に、高齢糖尿病患者ではインスリン治療が生活自立の障害となる老年症候群に大きな影響を及ぼすことが知られています。そのため、できるだけインスリンを使用せずに、体内のグルカゴンの制御とインスリン分泌・作用を改善する処方で、より優良な血糖コントロールに導く治療を実施してきました。
糖尿病の治療管理は、高血糖の是正と大血管障害の予防を基本とします。従って、虚血性心疾患や脳血管障害を予防するための食後高血糖の改善と、併発する高血圧、脂質異常症ならびに肥満症等の危険因子の管理が必要になります。近年、DPP-4阻害剤やGLP-1アナログ製剤が発売され、糖尿病治療薬は複数となり、どのような病態に対してどのように処方するのが2型糖尿病の管理により有効なのかを検討する必要があります。また、糖尿病の治療効果は、前医の治療の影響を大きく受けます。そのため、前医の処方薬を基に、どのように薬を切りかえるとより有効かが重要になります。
我々は血糖コントロ-ル不良者に対して、SU剤を用いずに、優良な血糖コントロール状態にする処方術を開発してきました。特に、インスリン治療を受けている2型糖尿病や1部の1型糖尿病のコントロール不良者に対して、インスリン自己注射量の減量または完全離脱へと導き、より優良な血糖コントロールに導くことに成功してきました。
また、2型糖尿病発覚時には、すでに存在していることが多い動脈硬化症に対して、心血管疾患発症予防における血管内皮機能や血清脂肪酸マーカーの臨床的意義についても検討しています。
● 東北大学病院加齢核医学科 インスリン再生外来 (旧メタボケア外来)
受診者数(2008年5月~2013年3月): 333名
主な疾患:
・糖尿病 174名 ・脂質異常症 93名 ・肥満症 66名
● 治療実績
糖尿病の外来治療実績 (H24年度)
n=109 | 初診時 | 治療 3ヵ月後 |
治療 6ヵ月後 |
HbA1c (JDS%) | 7.2±0.1 | 6.3±0.06 | 5.9±0.04 |
● インスリン自己注射治療中の糖尿病患者への外来治療実績(H24年度)
当外来治療によるインスリン減量度とHbA1cの変化
(n=21のうち10名はインスリン不要に)
初診時 | 治療 6ヵ月後 |
|
1日のインスリン平均総量(単位数) | 27±4 | 4±1 |
初診時 | 治療 3ヵ月後 |
治療 6ヵ月後 |
|
HbA1c (JDS%) | 7.7±0.3 | 6.7±0.2 | 6.1±0.1 |
● 肥満症の減量実績
当外来の食事療法による減量効果
体重変化(kg) | 体重変化(kg) | ||
初診時平均BMI | 初診時平均体重(kg) | 治療3M後 | 治療6M後 |
31.1±0.6 | 81.1±2.3 | -4.8±0.4 | -6.5±0.5 |
動脈硬化のスクリーニング
糖尿病の管理には血管障害の予防が重要です。我々は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞といった大血管障害の予防に対して、血管の弾力性を評価する血管内皮機能検査(Endo-PAT:左図参照)、血管壁の硬さを評価する検査(CAVI)、頸動脈内膜中膜肥厚度(IMT)やプラークの有無を評価する超音波エコー検査、日常摂取している脂肪酸の状態を生化学的に評価する血中脂肪酸分析等を合わせた総合的なスクリーニング検査を行い、動脈硬化の予防のためのテーラーメイド医療を実施しています。Endo-PATは、アメリカやヨーロッパ、そして、日本でも厚生労働省から血管内皮機能検査として承認された検査機器です。